エソロジー
ethology
Tinbergen,N. & Lorenz,C.Z. & von,Frisch,K.
今回はエソロジーという学問についてです。
動物(ヒトを含む)の行動を研究する生物学の一分野。行動学、動物行動学、行動生物学、比較行動学とも訳される。日本大百科全書(ニッポニカ)
今回は、エソロジーの大まかな説明、この学問で用いられる覚えておきたい用語、動物の行動と心理学の歴史についてこの順にお話ししていきます。
エソロジー
この学問について、明確な初まりは分かりませんが、1973年のノーベル生理学医学賞で三人の学者が受賞したタイミングをエソロジー、比較行動学の始まりとすることが多いそうです。
その三人の学者とは、ティンバーゲン(Tinbergen, N.)、ローレンツ(Lorenz, C. Z.)、ボン・フリッシュ(von, Frisch, K.)です。
この学問は20世紀半~ヨーロッパで主に栄えています。
改めてエソロジーとは、「自然状態、あるいは自然に近い状態で動物の行動を研究する学問」です。
ヒトの行動との比較を含む場合は、比較心理学と呼ばれます。
この学問は様々な呼び方がありますが、心理学においては比較心理学について主に学習されることをお勧めします。
本能的行動
この学問で、知っておいて欲しい用語です。
本能的行動とは、「動物に生得的に備わっている、刺激に対する複雑化された全身的行動のこと」です。
刻印づけや生得的解発機構でも用いられてくる概念ですので、この学問を理解するうえで必要な基礎となる用語として、概念を覚えておいてください。
ちなみに、この学問の成立に関わる3学者の、Tinbergen,N.が生得的解発機構(IRM)を、Lorenz,C.Z.が刻印づけを提唱しています。
動物の行動、心理学における歴史
時系列に沿って、エソロジーに関連する流れを紹介します。
Darwinによる動物と人間の進化的連続性の指摘
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Romanes,G.J.による『動物の知能』(1882)
この著書で動物の知的に見える行動の逸話を収集、動物に人間と同等の高い知能があるとする考え方を提唱
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Morgan,C.L.によるMorganの法則(節約率)の提唱(『比較心理学入門』1894)
「もしある活動が、心理的により低次の段階の能力を発揮した結果として解釈することができるならば、その活動をより高次の心的能力の結果として解釈してはならない」
簡単に言うと、難しい方法で解釈できたとしても、人間はより簡単な方法で物事を解釈しているよ、という感じのことを言っています。2+2をわざわざ頭の中で足さず、ほぼ暗記感覚で直感的に答えがでる、みたいな感じと思ってください。
これがモーガンの法則(節約率)です。ちょくちょく出ますのでここは覚えておきたいところ。
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クレバーハンス(Stump,C. & Pfungst,O. 1900年頃)
これは直訳すると「賢い馬」です。その名の通り、賢い馬がいるとして1900年頃に話題になりました。
計算をしたり、文字を読んだり、音程を理解する、とされ、当時ベルリンで評判になった馬をみんなはクレバーハンスと呼びました。
実際のところは、人の表情をみたり周りの空気を読む力が長けており、周囲の雰囲気を感じ取っていただけだという見解が強くなったみたいですが。
1+1の答えについて、蹄で二回鳴らすと周りが拍手をしたりするため、その状態で鳴らすのをやめる、などがあったそうです。
今回はエソロジーという題でまとめましたが、それぞれ小さな概念として頻出なものもありますので、是非確認しておいてください。