学習性無力感

学習心理学,心理学セリグマン,改訂版学習性無力感

learned helplessness

Seligman,M.E.P. (1967)

(改訂版 Abramson, L. Y. & Seligman, M. E. P. ,Teasdale, J. D. ,1978)

学習性無力感とは、「回避不可能な不快な事態を繰り返し体験することによって、無力感が学習され、それが他の場面にも般化すること」です。

この概念は非常に重要です。心理学を学ぶ人にとっては常識といっても過言ではない用語になりますので、改訂版と併せて覚えておいてください。

〈実験〉

手続き

  1. イヌを拘束し、電気ショックを与える。(90秒間隔64試行)
  • 統制可能群—イヌが頭を動かして反応パネルに触れれば電気ショックを停止する群
  • 統制不可能群—可能群がうまく電気ショックを停止できたら、こっちも停止される群
  1. 逃避学習で用いるシャトル箱で、10試行行う。

電球10秒間点灯され、その後電気ショック60秒間与えられる。

そこで電球が点灯している10秒の間に隣室に行けば回避できる、電気ショックが与えられ始めても、その間に隣室に行けば逃避できる、という仕組みを設定する。

要するに、与えられる電気ショックの量は同じで、その電気ショック自分で止められるがどうかのみが異なっている状況ですね。では結果を見ていきます。

結果

学習性無力感

この表からも一目瞭然ですが、手続き1で統制可能群に割り当てられたイヌと1を行っていないイヌは、自分でどうにかしようと工夫しますが、手続き1で統制不可能群に割り当てられたイヌは、自分でどうにか回避逃避する方法を探ることなく、60秒間電気ショックを浴び続ける、という極端な結果が出ています。

非常にかわいそう…というか、倫理道徳的に動物愛護団体が黙っていなさそうな実験です…昔はこのようにしてひどい実験が結構行われていたようですが、今は法律などでできなくなっているようです。余談でした。

では、改訂版学習性無力感について紹介します。

改訂版学習性無力感

Abramson, L. Y. & Seligman, M. E. P. ,Teasdale, J. D. ,1978

学習性無力感の実験ではイヌが被験体となっていましたが、ヒトの場合にはどうなのか?という視点が生まれます。そして、ヒトの場合、認知行動療法とも関連する原因帰属と関連させて捉えることの有用性を指摘して提唱されたのが改訂版学習性無力感です。ここで再検討されたのは大きくいうと、個人差についてです。

  • 誰にでも同じように起こるものなのか
  • 一時的な場合と慢性化する場合の違い

そこで提唱された統制不可能な事態に遭遇した人の原因帰属の三次元を紹介します。

原因帰属の三次元

  • 内在性:原因は内的or外的
  • 安定性:原因は安定的or一時的
  • 全体性:原因は全体的orその場合だけ

これらの3次元のうち、安定的全体的(かつ内的)に帰属されると無力感に結びつく、とされました。

特に安定的、全体的、が重要な要素で、内在性はそこまで大事でもないともいわれています。

この「内在性」ですが、様々な議論がありましたが、今日では学習性無力感には関連が薄いが、「抑うつ」には関連する、とされています。

今回はこれで終わりです。お疲れ様でした。