帰納的推論におけるエラー・バイアス
今回は、帰納的推論におけるエラーやバイアスについて5種類紹介します。
帰納的推論については別の記事で扱っていますので、『帰納的推論』を参考にしてください。
確率推論は帰納的推論に含まれるので、少し内容が被るかもしれません。
ここでは、
- 利用可能性ヒューリスティク
- 確証バイアス
- 代表性ヒューリスティク
- 相関関係の検出
- 係留と調整のヒューリスティク
の順に、紹介します。
利用可能性ヒューリスティク
availability heuristic
ある事象の生起確率や事例数を判断する時、その事例が想起しやすければ、その生起確率や事例数が多いと判断するヒューリスティクです。
〈研究〉
「rで始まる単語と、rが3番目に来る単語では、どちらが多いでしょうか。」
という問いに対し、人はrで始まる単語と答える人が多いようです。
ちなみに正答は3番目~の方です。
この傾向には、このヒューリスティクが関係しているとされています。
つまり、人は自分で思い出せる例に基づいて判断します。そのため、rで始まる単語の方が思い出しやすい=利用可能性が高いため、実際とは違う答えを出してしまったということです。
これは時には効率的に要領よく正答を導き出す方法ではあるものの、その一方で単純思考に陥りやすいという欠点を併せ持っているのです。
確証バイアス
confirmation bias
仮説を支持する事例を集めたがる傾向です。仮説を反証する事例を無視する傾向でもあります。
例えば、大麻を使う非行少年は、大麻が及ぼす悪影響よりも、大麻はタバコよりも体への影響は薄い、などと言う情報を信じたりします。確証バイアスと言えば、『四枚カード問題』が有名ですので参考にされて下さい。
代表性ヒューリスティク
representativeness heuristic
限られた事例の代表性に基づいて、その事例があるカテゴリに属する可能性や生起確率を判断するヒューリスティクです。ある事例が、その母集団やカテゴリを代表していると認識されるほど、その事例があるカテゴリに属する可能性や生起確率を高く判断する傾向です。
相関関係の検出
covariance detection
これは2つの事象が起こる頻度だけに着目して評価する傾向です。共起と因果を混同することも起こりやすいです。
例を挙げます。不適切かもしれませんが、精神障害を患う人が殺人を犯したとします。全人口の中では少数派の精神障害者と、また少数派の殺人犯が同時の要素になってしまう。そうすると、人は“精神障がい者”=殺人を犯しやすい”という誤った方程式が作られてしまったりします。
このバイアスは、共変関係の検出、錯誤相関など、訳し方によって様々な呼ばれ方があります。意味は分かっても、そのバイアスの名前が色々あると、正誤に迷ってしまうと思いますので、これらの呼ばれ方を把握しておく必要があります。
係留と調整のヒューリスティック
anchoring and adjustment
これは、判断の際の手がかりとなる初期値を基準として判断・調整することです。
〈研究〉
1⃣ミシシッピ川の全長をAかBの質問をした上で推定させます。
ここで、質問の数字を変えます。
A:500マイルより長いか短いか、実際は何マイルか
B:5000マイルより長いか短いか、実際は何マイルか
回答の平均値はAは1000、Bは2000でした。(実際は2348マイルだそうです)
2⃣AとBの掛け算の答えを推定させます。
A:8×7×6×5×4×3×2×1
B:1×2×3×4×5×6×7×8
平均値はAは512、Bは2250でした。(実際は、40320です)
これらは、いずれも判断の手がかりとなる初期値を基準として判断してしまう為、なようです。
係留効果、アンカー効果、アンカーリング効果、とも呼ばれます。
以上で5つのエラーとバイアスについては終了です。
お疲れ様でした。