心理学研究法(発達心理学系)
今回は、研究法の中でも、発達心理学でよく使われる研究法の紹介です。
心理学の研究法にはさまざまな種類がありますが、質的研究や量的研究などの説明については、心理学の中では全般的に使われるため、別記事「心理学研究法」を参照していただければと思います。
それでは、さっそく、今回の記事では、発達上の変化や連続性を明らかにするために行われる研究法についての紹介です。
・横断的研究法
・縦断的研究法
・コホート分析
・有名な研究の紹介
この順で紹介していきます。
横断的研究法
cross-sectional method
同時に異なる年齢集団を対象に、ある特性に関するデータを収集し、集団ごとの平均値から、人の発達のパタンを見出そうとする方法です。
・長所:一度に多くの年齢集団のデータを取ることができるため、コストが比較的かかりません。
・短所:実際の時間経過に伴う変化(個人内差)を調べていないため、得られた結果は推測の域を出ません。
縦断的研究法
longitudinal method
特定のコホートを対象に、追跡データを取る方法です。各年齢時の平均値から、標準的な発達が見出せます。また、各年齢段階の相関を取ることで、個人の特性の安定性なども明らかにできます。
・短所:時間やコストがかかります。また、集団によって、そのコホート※の特殊事情が入るため、現実の発達を捉え損ねる場合があります。研究とともに対象者が欠落するため、十分な数を確保できないことが多いです。
※コホート:集団のことを指します。コホートには、住んでいる土地の地域差や独特な文化、その年齢特有の認知など、様々な面で特徴が出てきます。
EX:東日本大震災3.11を経験した世代は、津波の恐ろしさを他の年代以上に認識している。など。
コホート分析
これは横断的・縦断的研究法のそれぞれの長所と短所を融合させたような方法になります。シャイエの最も効率的なデザインと呼ばれます。これは、年を経るごとに対象者が欠落してしまうという縦断的研究の短所を補うため、新しく研究を行うごとに対象者を増やすことで補っていく形になります。図で表すとこのようになります。↓同じ記号が同じコホートだと考えてください。
このように、定期的にコホートを足していきつつ、縦断的に個人内差を研究していくことが可能になります。
ニューヨーク縦断研究
(Thomas & Chess)
最後に、有名な発達心理学の研究を紹介します。トーマスとチェスが、子供の気質※についての個人差を調べたものです。
※気質(temperament):行動特徴の中でも、発達初期から現れる生物学的基盤を持つ、比較的不変なもの
・NewYork在住の中流階級の子供133人の乳児期と青年期を対象とします。
・気質を評価する9つの基準を設けます
活動水準、接近ー回避、周期性、順応性、反応の閾値、反応の強度、気分の質、気の散りやすさ、注意の範囲と持続性
・結果
約65%が3つに分類されました。
1:Difficult Child(扱いにくい子供)
神経質、生活リズムが不安定、反応が乏しい、不活発、問題の対処が難しい、養育者が育児に自信を無くしたり、子供に対してポジティブなイメージを持ちやすい
2:Easy Child(扱いやすい子供)
3:Slow-to-Warm-up Child
(エンジンがかかりにくい子供)
☞トーマスらは、親の養育態度や行動に大きな影響を及ぼす子供側の特性として注目しました。
考察
・気質は一定の連続性があること。
特に「扱いにくい子供」の70%、「エンジンがかかりにくい子供」の40%が青年期に行動上の問題を示したそうです。
ただ、同じ気質的特性が、常に同じ発達的な結果につながるとは限りません。子供の持つ気質と環境要因(親の養育態度など)との組み合わせによって維持、変化します。
他、「適合の良さ」Goodness of fit 、「適合の悪さ」Poornes of fit については、Sameloff & Chandler の発達の相乗的相互作用モデルで詳しく述べられているそうです。ここでは扱いませんが、興味があれば調べてみてください。
お疲れさまでした。