概念

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今回は概念について説明します。

概念に関する理論がいくつかあり、ここでは4つのモデルを紹介します。

まずは定義です。

定義

「個々の事物・事象に共通する性質を抽象し、まとめあげることによって生活体内に作られる内的表現」

「~とは何か、についての知識」

この定義そのものについて問われる問題はないと思うので、ここらへんは何となく理解していただければいいかと思います。

ここから概念のモデルについて紹介します。概念の研究について、時代の流れとともに研究の焦点を当てるところが変わります。古い概念研究では、概念の獲得の過程について焦点が当てられていました。そして時代と共にその研究の焦点は表象に移っていきます。そのため、今回の記事では大きく「古典的モデル」「抽象モデル」に大別しています。

【古典的モデル】(規則モデル)

定義的特徴理論

まず、概念のモデルの中で、古典的モデルと呼ばれる定義的特徴理論についてです。

これは、必要十分な定義にあてはまるかどうかで概念が決まるとする考え方です。

必要十分条件はその概念を定義する特徴(定義的特徴)によって定義されます

数学、偶数などがこれに当てはめ易い例ですね。

昔の概念研究の典型で、昔は概念の表象よりも獲得過程に関心が持たれていました。この時代の研究の有名なものにBruner概念達成実験(『思考の研究』1956)があります。概念達成実験で詳しく取り上げますので参考にされて下さい。

【抽象モデル】(確率モデル、確率論的モデル)

このモデルではプロトタイプモデル事例モデルを紹介しますが、これらの特徴は、どちらも類似性がキーワードです。それでは見ていきます。

プロトタイプモデル

このモデルでは、概念はそのカテゴリの多くの事例を要約した平均的・典型的なもの(プロトタイプ)として表象される、としています。また、このモデルの特性として、あるカテゴリに当てはまる事例であるという確率を与えることから、確率モデル、とも呼ばれたりしています。

このモデルで表すことのできるものとして、きっちりした定義が難しい日常概念が当てはまります。

すべての事例がある特徴を共有するのではなく、多くの事例に共有される特徴によって概念が決まる、というものです。類似性、ですね。

その特徴の重要度は、どれだけの事例で共有されているかできまります。

事例の典型性は、どれだけ重要度の高い特徴を共有しているかで決まります。

この理論は、典型性効果による現象をよく説明します。典型性効果は、Collins&Quillianによる階層ネットワークモデル(1969)で説明が困難だとされたものです。この効果についての説明は『意味ネットワーク理論』の記事の中の階層ネットワークモデルの説明で扱っていますので、是非参考にされて下さい。

また、この理論をRosch&Mervis(1975)は家族的類似性の概念を用いて説明しており、定義的特徴理論の反証としても有名です。

家族的類似性(Wittgenstein)

家族はよく似ているが、全員共通の特徴があるわけではなく、事例同士が少しずつ似ている特徴を共有し合うことで全体のまとまりが生まれる、ということをWittgensteinは家族的類似性と呼びました。

事例モデル

事例モデル範例モデルとも呼ばれます。

このモデルはプロトタイプモデルよりは簡単なので理解しやすいと思います。

カテゴリ内の事例は、事例として丸ごと記憶されている、とする考え方です。

我々の頭の中には、概念、というまとまった表象はなく、個々の事例の集まりがある、と仮定しています。

ある事例がどのカテゴリに当てはまるかという分類・同定や、典型性効果も事例モデルで説明することが可能です。

また、プロトタイプモデルで説明が可能なものは事例モデルでの説明も可能です。

この理論で説明可能な内容は択一対策として覚えておいてもいいと思います。

【理論に基づく概念モデル】

最後にこのモデルを紹介します。このモデルは、概念には様々な機能があり、表象モデルでは説明しきれないということから出てきたモデルです。

Murphy&Medin(1985)によるモデルで、理論ベースド理論、など様々な呼ばれ方をしますが、概念に関するモデルで理論~のようなモデルはこのモデルを指します。

これは、カテゴリの凝集性を作っているのは、類似性ではなく「理論」である、という考えのモデルです。

私たちの持つ概念は、概念の内部で、あるいは他の概念との間に、「理論」とも呼べるような緊密な関係がある、としています。

例えば、「鳥—羽」「鳥—空を飛ぶ」のうち「羽」「空を飛ぶ」も理論でつながっている、と考えるのがこのモデルです。ふわっと分かっていただければいいと思います。

このモデルとセットで出てくる重要な用語としてアドホックカテゴリという言葉を紹介しておきます。

アドホック・カテゴリ

(Barsalow,1982,1983)

これは、特定の文脈で用いられるために自然に作り出されたカテゴリのことです。理論に基づく概念理論はこれをよく説明します。

持ち物にはそれぞれにつながるものはないですが、あるワードを通して、理論を中心に構成されるものです。

例えば、ランタン、テント、炭、リュック、着替え。これらそれぞれにつながりはありませんが、これらに「キャンプ」というワードを通すことで、理論を中心にカテゴリが構成されます。

以上が概念についてのモデルです。

この記事の中では、人よりそれぞれのモデルの内容を覚えておくのは必須だと思います。アドホックカテゴリは特に頻出で、理論に基づく概念モデルとセットで覚えておきましょう。

お疲れ様でした。