印象形成
今回は印象形成についてです。
この題は心理学の中では結構重要な要素になってきますので、長くなりそうです。
興味のある、または知りたいところまで目次を利用して飛んでみてくださいね。
では、今回の記事の構成についてです。
- 定義(Asch,S.E.)
- ゲシュタルトモデル(Asch,S.E.)
- モザイクモデル(Anderson,N.H.)
- 二過程モデル(Brewer)
- 連続体モデル(Fiske & Neuberg)
この順にお話ししていきたいと思います。
印象形成
印象形成とは、『人の印象は、ある人物における個々の情報を統合する全体が存在し、個々の特性は全体によって規定される。』と定義されています。
この定義はアッシュ(Asch,S.E.)によるものなので、彼の考え方が濃く反映されていますが、この定義からもわかるように、印象形成とは、対象の人物の印象を形成すること、またその印象が形成される過程について扱っている、ということが分かります。
この概念の中で最も有名な人物がアッシュ(Asch,S.E.)です。ではさっそく彼のモデルについてお話していきます。
ゲシュタルトモデル
アッシュ(Asch,S.E.)
このモデルの考え方は、アッシュによる定義からも分かりますが、改めて記しておきます。
『人は、ある人物における個々の情報をモザイクのように組み合わせて印象を形成するのではなく、それらを統合する全体がまず存在し、個々の特性は全体によって規定される。』
アッシュはこのように考えています。
印象形成をこう定義した理由となった実験を紹介します。
<実験>
性格特性用語のリストを用い、参加者にある人物についての印象を形成させます。
形容詞リストを読み上げ、その人物に対する印象を形成させ、その後印象の評定をチェックリストで行いました。
ここでは、形容詞リストの一語だけ異なる対になる単語を用いることで、その一語が印象形成に及ぼす影響を調べました。↓
このようなリストを用いており、このリストの場合は、「温かい」と「冷たい」を対の言葉とし、影響を調べています。
この結果、人物の全体的な印象は、ある特性用語では大きく影響し、またある特性用語ではあまり影響しないことが判明しました。
この結果から、性格特性用語には「中心特性」と「周辺特性」と大きく二つに分類できることが分かりました。
「中心特性」:印象形成に大きな影響を及ぼす。Ex:温かい/冷たい
「周辺特性」:印象形成に大きく影響しない。Ex:丁寧な/無礼な
その他の結果として、順序効果も見られています。というのは、形容詞リストの読み上げる順番を操作することで、その人への印象形成に影響が出たということです。
この結果から、人物の全体的印象は、中心特性を核とするまとまりのある全体を構成し、個々の特性はその全体との関係でその意味付けが決まる、という考え方に至っています。
<まとめ>
アッシュの理論について、軽くまとめておきます。
- 印象形成は、個々の特性の寄せ集めによって決まるのではなく、個々の特性の全体的な関係によって決まる。
- 全体的印象を左右する情報がある(中心的特性)。
- 情報提示の順序が印象形成に影響することがある(呈示順序効果)。
- 中心的特性でも他の用語との組み合わせによっては周辺的特性になることがある(文脈効果)。
これらは頻出、基礎の概念になりますので、必ず説明できるようになっておいてください。
次の理論から少し重要度は下がります。
モザイクモデル
(Anderson,N.H.)
これは情報統合理論とも呼ばれる、アンダーソンによって提唱されたモデルです。
アッシュと同様の結果を、個々の特性語の代数的結合で説明しました。
他者に対する印象(望ましさ)の程度は、個々の特性の尺度値に重みをかけ、これを合計した値に等しい、としました。何を言ってるかきっと伝わってないと思いますので、まずは式を見てください。
これを式に表すとこんな感じです↓
Rn:n個の特性について行われる最終的な評価
Si:i番目の特性の尺度値
Wi:i番目の特性の重み
この理論は認知代数モデルとも呼ばれています。
この理論についてはサラッと確認しておけばいいと思います。式の暗記まではしなくてもいいのではないでしょうか。
二過程モデル
(Brewer)、1988
次は印象形成の二過程モデルです。
ブリューワーが1988年に提唱したモデルで、対人認知を二過程の処理で行われていると仮定しました。
- 第一段階
相手のカテゴリ的属性(人種、性別、年齢等)を即座に自動的に同定される段階です。
図では自動的処理として上半分に書かれている処理を指します。
- 第二段階
相手についての意識的な処理を行う段階です。
図では意識的処理として下半分に書かれている処理を指します。
この段階ではさらに二段階に分かれます。認知する相手が特別な存在であるか、または今までのカテゴリの中に属するかどうかによって分かれます。
その処理モードは「カテゴリーベース」と「個人ベース」と呼ぶことができ、図ではカテゴリ化、個人化という書き方をしています。
この理論は、社会的事象の独自な特性を組み込んだ理論やモデルが提出され始める端緒となったそうです。
この理論はここまで理解できていれば大丈夫だと思います。
連続体モデル
(Fiske & Neuberg)
最後は連続体モデルです。
これはフィスクとニューバーグによって提唱されました。
これは結構出ると思います。
カテゴリーベースと個人ベースの処理の二つの過程を仮定しています。ここは先ほどのブリューワーの二過程モデルと同じですね。異なる点は、この両者の処理過程は連続的であることです。相手との相互作用を経て、カテゴリーベースから個人ベースに段階的に移行する、と考えられています。
少し画像が大きくてすみません…。
このように、段階的に移行する、連続的な処理過程であることが分かります。そのため連続体モデルと呼ばれているんですね。
もう少し細かいこととしては、カテゴリ属性に基づく感情・認知・行動傾向は「カテゴリ依存型」、個人属性に基づく感情・認知・行動傾向は「ピースミール依存型」と呼び区別されます。
ピースミールという表現は英単語でpiecemealで調べてみてください。断片的、個別の、という意味の英単語であることが分かると思います。
ちなみに、択一の問題で、「個人特性の分析・統合」という最後の段階のことを「ピースミール統合」という表現で出題されているのを見かけたことがあります。一応覚えておいても役に立つ用語かもしれません。
以上で印象形成については終了です。お疲れ様でした。