愛着(アタッチメント)

心理学,発達心理学,臨床心理学

attachment

ボウルビィ Bowlby,J

愛着とはボウルビィ(Bowlby,J)が初めて提唱した概念です。

愛着(アタッチメント)とは、心理学において主要なキーワードとなってきますので、今回は少し長くなるかもしれません。下記の順で紹介していこうと思います。

  1. 愛着とは
  2. アタッチメント概念の歴史
  3. アタッチメントの発達段階
  4. アタッチメントの個人差

この流れで紹介していきます。

1⃣愛着とは

まず、愛着(アタッチメント)についてです。

ボウルビィ愛着について、ほかのどの要素より発達全般の礎となるものと述べています。

一般的に定義としては、「何らかの危機を感じる状況において、特定の他者との近接を求め、それを維持しようとする傾向」と言われています。

より詳しく説明すると、生物個体がある危機的状況に接したり予知した時に、強い不安や恐れの感情が喚起されます。そのとき、特定の他個体としっかりと接触することを通して、主観的な安全の感覚を維持しようとする心理行動的な傾向と、神経生理的な制御機序を指す、とされています。

要するに、子供が怖い!と感じたときに母親にくっつくことで安心を得る傾向と、その感覚のことを指しているということです。

ポイント

  • 特定の対象に対する情緒的結びつき
  • 他のどの要素よりも発達の礎となる

これが愛着の理解の上でのポイントだと思います。

アタッチメント関係の要素

次にアタッチメント関係の要素を4つ挙げます。

  • 近接性の探索
  • 分離苦悩
  • 安全な避難所
  • 安全基地

これらの4要素がアタッチメント関係の形成に関わります。

母親とその子供を例に挙げてみると、親子での容姿が似ている、離れると悲しい、母親がいれば娘は冒険できる、母親の元は安全であると感じる、これらの四要素がアタッチメントの関係では形成されているということです。

ちなみに今回の記事でもサラッと触れますが、愛着と言えばストレンジシチュエーション法という、幼少期の子と親の愛着関係をタイプ分けする研究法があります。詳しくは別記事の『ストレンジシチュエーション法』を参照してください。随時更新していきます。

2⃣アタッチメント概念の歴史

アタッチメント、又は愛着という概念についての歴史に触れたいと思います。

そもそも愛着とは、ハーロウ(Harlow,H.F.)の「代理母実験」やボウルビィが有名かと思われます。ですが、それ以前に愛着のような概念を使用した説が浮上しています。

それがSears,R.R.による二次動因説です。この説は、母子の関係は一次的動因である生理的欲求満たす、満たされる相互関係であり、この一次的欲求が満たされることで、二次的動因である依存性が獲得される、としています。

この説の後、ハーロウによる「愛の本質」研究が行われ、「代理母」実験が有名となります。ここで、依存行動依存欲求の出現には授乳による一次的動因の満足は必要ではないという考え方が主流となります。

ローレンツ(Lorenz,K.)刻印付けの研究報告も、この考え方を支持することとなった研究の一つです。

ボウルビィ愛着理論1969年の提唱でここで愛着(アタッチメント)という用語が発展していくことになります。

ちなみに、母子関係の研究について有名なものである、ローレンツ(Lorenz,K.)刻印付けについては別で『刻印付け』の記事で紹介予定ですので、参照してください。

刻印付けは、1920年代に報告されていましたが、有名になったのは1949年「ソロモンの指輪」を出版した後のため、1930年代以降から知られていきました。

年代順にまとめるとこうなります↓

3⃣アタッチメントの発達段階

愛着は発達します。その段階は、行動レベルから表象レベルへ徐々に移行する過程で段階分けされます。

誕生~12週頃 

  • 人を区別しない愛着行動
  • 追視、リーチング、微笑、泣き、発声、喃語などがみられます。

12週6か月

  • 特定の人への愛着行動
  • 愛着行動を向ける対象が限られてきます。

6ヶ月~2,3歳頃

  • 愛着行動が活発になる
  • 人見知り、分離不安、後追い、しがみつき

3歳~

  • 主要な対象との結びつきのイメージの形成
  • 内的作業モデルが機能し始めます。

※内的作業モデル

(internal working model)

愛着対象との関係のイメージが内在化し、他の人との関係においても一般化され、個人の対人関係の在り方に一貫性と安定性をもたらすもの、とされています。

基本的には愛着、アタッチメントなどとほぼ同義で、他のどの要素より発達全般の基盤となります。

他詳しくは『内的作業モデル』という記事を更新予定です。

4⃣アタッチメントの個人差

アタッチメント、愛着は、概念が提唱された後、個人差が注目されることになりました。

そこでエインズワーズ(Ainsworth,M.D.)は、ストレンジシチュエーション法を発案しました。アタッチメントの個人差を測定する実験法です。

この実験法についての詳細は別記事『ストレンジシチュエーション法』で参照してください。随時更新していきます。

この実験法では、親子の離別時、再開時の子供の反応から、愛着のタイプを分類分けしています。

この記事では、愛着のタイプにのみ軽く触れていきます。

アタッチメントスタイルの分類

  • Aタイプ 回避型
  • Bタイプ 安定型
  • Cタイプ アンビバレント型
  • Dタイプ 無秩序・無方向型

これら4分類です。

この子供の4分類と、この分類を持つ子供の母親の特徴も挙げています。

今回の記事ではこれだけサラッと触れて終わりにします。

ちなみに、Dタイプだけエインズワースによる提唱ではないため、ここでは最も主要な3タイプのみ強調しています。