オペラント条件づけの再検討
今回はオペラント条件づけについて、より細かく見ていきます。
大体の基本的な説明は、オペラント条件づけの記事で扱っていますので、この記事はより限定的で細かいものになっています。今回は、今までの定説として扱われてきたオペラント条件づけの反証について紹介します。
今回のキーワードは『本能的逸脱(漂流)』『生物学的制約』『SSDR』です。
簡単に言うと、今までのオペラント条件づけは、行動レパートリーに含まれるものであれば何でも条件づけ学習によって習得が可能、とされてきたんですね。しかしいくつかの反証が出てきます。それらについて、紹介します。
それではまず、今までの定説についておさらいです。
今までの定説
「有機体の行動レパートリ―に含まれ得るもので、自発できる随意反応であれば、直後強化と漸次的接近法を用いて、どのような反応でも条件づけることができる」
では、反証について紹介します。
本能的逸脱(instinctive drift)
本能的漂流ともいいます。
これは、過剰な訓練を行うと、被体験の行動は強化された行動から逸脱し、自然環境でその動物が強化子を探すときに示す本能的行動へと向かう、というものです。学習や条件づけが高度に進行し、ある限度を超えたときに見られます。
要するに、最初はその行動は独立してその行動が学習されていたにもかかわらず、学習が高度に進行すると、本能的行動と混ざる…合体する…?ような現象が起こるのです。
例えば、アライグマに、コインを箱に入れるよう学習させたときの行動です。最初のうちは、コインをすぐに入れに行くことができましたが、コインを二枚に増やすと、それらをこすり合わせる行動を何分間も行うようになったそうです。このこすり合わせる行動は、本能的行動と連動していると考えられ、一度学習した行動が本能的行動へ向かってしまった、と解釈できるわけですね。
生物学的制約
次に、生物学的制約についてです。
「いかなる動物種の行動も、その本能的パタン、進化の歴史、生態的地位(ecological niche)の知識がなければ、理解し、予測し、制御することはできない」としました。
オペラント条件づけ学習は、生物学的制約をうける、といった使い方をします。
ちなみに、先ほど紹介した本能的逸脱も生物学的制約を受けての行動になりますね。
この反証を出したのは、ブレランド夫妻です。1961年『有機体の失敗行動』(misbehavior of organism)で提唱しています。ブレランド夫妻(K. Breland & M. Breland)は、14年間、38種の動物、6000以上の個体に芸を仕込んで商売をしていました。そこで、動物によって、どうしても身に付けることのできない芸があることを証明した、という論文です。
SSDR(species-specific defense reaction)
Bolles,R.C. (1970)
種に固有な防御反応 と日本語では訳されたりします。
動物には、生命に危険が及ぶような苦痛、ないし驚異的な状況において取るべき防御反応が生まれつき備わっている、としています。その防御反応のことをSSDRと呼びます。そのためSSDRは様々なものがありますが、典型例として「3つのF」を紹介しておきます
「3つのF」
- Fleeing 逃避
- Fighting 闘争
- Freezing 凍結
また、回避反応は、一種の予期行動であり、危険からの逃避と安全への接近をもたらしますが、その行動はSSDRに限られる、としました。
今回のオペラント条件づけの再検討は以上で終わりです。お疲れ様でした。