オートマティシティ
automatic processing / automaticity
Bargh, J. A.
オートマティシティについて説明します。
この言葉は「処理の自動性」のことを言い、漠然とした語のため、この言葉に関連するいくつかの理論や実験を紹介します。
無意図性、無自覚性、効率性、統制困難性、などという言葉としても訳されます。
- 自動的特性理論
- プライミング
- 閾下プライミング
- インプリシット・ステレオタイピング
- 疑似有名効果
今回はこの順で説明していきたいと思います。
自動的特性理論
Smith & Miller (1983) , Uleman
この理論は「人は、原因帰属を媒介せずに、行動から直ちに属性を推論している」とする理論です。
この理論いついて説明するモデルとして三段階モデル(Gilbert,1995)を紹介します。
三段階モデル (Gilbert,1995)
この図のように、人は、このカテゴリー化、特性記述、修正、という三段階を経るというモデルです。
カテゴリー化(どんな行動か?)⇒特性記述(対応する傾性は?)⇒修正(状況要因を考慮)という流れで人は状況や人を認知しているということです。
また、割引理論がはたらくためには、その考慮されるべき外的要因が認知されることと、修正に必要な認知活動をする余裕があることが必要としています。
ちなみに割引理論とは、簡単に言うと、初めに認知した評価から外的要因が考慮されることによって好意が割り引かれたりする、と考えればいいと思います。ここは好意でなくても能力でも性格でもいいです。割引というと、選好の逆転という理論が有名ですが、この理論では、選好は時間という外的要因によって割引かれていくという割引モデルが提唱されています。少し話がずれてきたので戻します。
この三段階モデルの統制的過程を経て状況要因を考慮して修正する段階に至るためには、認知活動をする余裕がなければなりません。この時、状況を考慮した修正ができなくなっている状態を認知的多忙(cognitive busy)と呼んでいます。
プライミング
プライミングという用語については詳しくは『プライミング』という記事で扱う予定です。
ここではオートマティシティと関連したプライミングの実験について紹介します。
〈実験〉 Higgins (1977)
実験の手続きは、まず先行課題で特定の性格特性用語を処理し、その後ある主人公についての文章を読みます。この時、先行課題の性格特性用語がネガティブな単語を処理した群と、ポジティブな単語を処理した群の二軍に分けます。(Ex:ポジティブ「勇敢な」ネガティブ「向こう見ずな」など)
この結果、印象形成課題において、それらの特性語が影響することが分かっています。
このプライミング効果は、スキーマが自動的に利用されたことを示しています。
スキーマが自動的に活性化されて、実験参加者は無意識にそれを利用してしまった、と考察することができます。
閾下プライミング
Bargh & Pietromonaco (1982)
これは、プライミングの一種です。プライミングの中でも、刺激が、閾下で提示され、実験参加者がそうした処理をしたことに全く気付かない時にも、先行処理の効果が起こることを言います。
この閾下プライミングのオートマティシティと関連した実験を紹介します。
〈実験〉
実験参加者に100ミリ秒という短い間、単語を呈示します。100ミリ秒というのはよくわからない人も多いと思いますが、識別が不可能なほど一瞬である、ということだけイメージできていれば大丈夫です。
その単語を100回呈示します。その中に「敵意的」な単語をいくつか混ぜ入れます。
その後、ある人物について書かれた記述を呈示され、印象を求めます。
結果、敵意的な単語が多く混ざった実験参加者の方が、その人物を敵意的な人物と評価しました。
インプリシット・ステレオタイピング
Devine (1989) Banaji & Greenwald (1995)
ここではDevineの実験を紹介します。
〈実験〉
Devineの実験は閾下プライミングを用いた実験です。
この実験は先行課題を課す群、課さない群、に分けて行います。
先行課題は、「クロ」「貧乏」「ジャズ」など、黒人に関連する語彙を閾下呈示します。
実験参加者(白人学生)に、人種不詳の架空の人物についてのやや曖昧な文章を読ませ、印象を求めます。ここでの文章は、やや攻撃的行動を含ませた文章にしておきます。
結果、先行課題を課すと、対象人物をより「非友好的」「不親切」などのネガティブな方向に評価しました。
また、人種的偏見の強弱は関連がなく、黒人関連語80%のリストを呈示された人は、「黒人ステレオタイプ」が自動的に活性化して、後続の課題の対象人物にそれを適用して判断しました。偏見の少ない人でも、閾下の刺激に基づくステレオタイプの活性化と適用は抑制できなかったようです。
疑似有名効果
false fame effect
Jacoby et.al (1989)
これは、知名度の低い人名でも、前もってその名を見ていた場合、見たこと自体を思い出せないと、知名度の高い人名であると錯覚する現象のことです。
ここでのポイントは、どこでどのようにして見たかを思い出せなかった場合、というのが注意です。まあ軽く考えたら納得は行くと思いますけどね。
以上でオートマティシティと関連した用語については終わりです。お疲れ様でした。