競争と協同
今回は競争と協同についてです。ここで用いられる実験が有名なものばかりですので、しっかりと読み込んでくださいね。差別をなくす活動にも応用できる考え方になっています。それでは、さっそく説明していきます。
競争
compeetition
複数の個人または集団が、一つの目標を達成しようとして競い合い、一人(一集団)がその目標を達成すると、他はそれに妨害されて目標を達成できなくなる事態のこと。
協同
cooperation
複数の個人または集団が一つの目標に向かって力を合わせることによってはじめて目標を達成できるという事態のこと。
ではそれぞれの定義についてお話ししたところで、それらに関係する実験をいくつかご紹介します。
<実験>
Sherif &Sherif (1969)
サマーキャンプ実験
敵対し合っていた少年たちの集団は、両集団が協力して初めて達成できるような上位目標が設定されることにより、協力し合うようになり、敵対感情は次第に消失した。
⇒上位目標の設定により、競争関係が協同関係に移行することを示した実験です。
囚人のジレンマ・ゲーム
Prisoner’s Dilemma Game : PDG
社会における協同と競争を分析する「実験ゲーム」における非ゼロサム型の代表例です。
①各人にとっては、”非協力”を選択する方が”協力”を選択するよりも有利な結果をもたらす。
②しかし両者とも”非協力”を選択すれば、双方にとって最も不利益な結果となってしまう。
→双方の利益を考慮して協同するか、自分の利益を優先させて競争するか。という選択を迫られるゲームとなっています。
※ここでの”利益”とは、金銭的・物理的・精神的(満足感、愛等)を含みます。
コンピューターシュミレーション(Axelrod)
これは他の実験と違い、相手への信頼は不要です。
繰り返しのある囚人ジレンマ・ゲームを行ってもらいます。多数回反復します。世界的に名高いゲーム理論家(※心理学者や経済学者を含む)14人で、トーナメントを行います。
⇒「しっぺ返し方略(Tit-for tat:TFT)」が優勝。
この方略とは、初回は協力、2回目以降は前回相手が出した方略に従う、という方略です。
全般に非協力的プログラムより協力的なプログラムの方が成績は良く、互いに何度も付き合いを続けていくような関係において、協力行動は進化する、といったことが分かりました。
「互恵主義に基づく協調関係の成立と安定」の強調
Axelrod , 1987
この結果が成立するには//個人は理性的でなくてよい。約束を交わしたりする必要もない。//信頼を仮定する必要もない。互恵主義を採用すれば、裏切りは非生産なものとなる。利他主義も不要である。この戦略は相手がエゴイストであっても相手から協調を引き出せる」
といったことが言われるほどです。
これらの実験を例に挙げて、差別問題にかかわる記述問題のヒントにされるといいかと思います。
今回はこれで以上です。お疲れ様でした。