記憶の変容
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Modification of Memory Content
今回は記憶の変容についてお話しします。
記憶とは、確かなものではなく、時間によって忘れ去られてしまったり、自分の認知によって変容してしまったりします。今回は、記憶の変容についてお話ししますが、特に、記憶した後の干渉によって変容してしまう場合について説明します。
記憶した本人はしっかりとその当時のまま記憶していると思っているかもしれませんが、実は時間がたつにつれて変わっていくものなんです。PTSDで見られるフラッシュバックもその一つかもしれません。多分違いますが、似たような感じです。実際は震度5の地震であっても、当時の自分の状況や被害状況から、より強い揺れを感じたと思う場合です。細かく掘り進めていくと異なる点が露わになってしまうので、軽くイメージしてもらえたら十分です。
それではまず、記憶の変容についての有名な研究をいくつか簡単に紹介します。
・バートレット(Bartlett, 1932)の文章を用いた研究
⇒『幽霊たちの戦い』という曖昧な文章を読んでもらい、一定期間あけてから別日にどのような内容であったかを説明してもらう実験を行っています。
・カーマイケル(Carmichael, etc, 1932)の言語的符号化が記憶の内容に及ぼす影響
⇒この研究は、曖昧な図形について、記憶してもらい、一定時間経過した後に再生してもらう実験です。ここで記憶するために曖昧な図形に名前を付けてもらいます。その言語的な符号化が記憶にどう影響するかを見た研究です。
・ロフタス(Loftus)の語法効果
⇒これについて今回の記事で詳しく扱っていこうと思います。
語法効果
ロフタス (Loftus)
ロフタスは、後から付け加えられた言葉がどれだけ過去の記憶に影響するかを調べる実験をしています。目撃証言の信憑性についての研究です。
ちなみに、この人物は凶器注目効果や、事後情報効果等を提唱した人物としても有名ですので、記憶の変容といえばバートレットかロフタス、と覚えておくとよいでしょう。
〈実験〉
Loftus
まず、被験者に交通事故の映像を見せます。
そして、その後、その映像について2群に分けて質問します
①激突スピードはどのくらいでしたか?
②当たったスピードはどのくらいでしたか?
この2群では、①の質問の仕方の方が、見積もった速度が速い傾向にありました。
その一週間後、この2群に同じ質問をします。
「ガラスが割れるのを見ましたか?」
この結果、①の群の人の方が、はるかに多く「Yes」と答えたそうです。
この結果から、言葉の概念が記憶を変容させたことが分かります。
ちなみに、質問の“激突”や“当たった”の部分について、表現の仕方によって、被験者の見積もった速度は異なっている、というデータもあるようです。それをまとめたのが下の表です。
この実験から、語法効果によって記憶の変容が起こり得る、と言うことができます。
今日では、目撃者からより正確な情報を聞き出すために、認知インタビューと呼ばれる手法が開発されています。
以上で記憶の変容については終わりです。
その他の記憶については、『記憶』という個別の記事から参考にしてください。
それではお疲れ様でした。
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