意味ネットワークモデル
今回は、意味ネットワークモデルについてです。
さっそく意味ネットワークモデルについての説明に入る前に、この理論が出来上がるまでの流れについて把握しておいた方がいいと思いますので、流れからお話しします。
~意味ネットワークモデルができるまで~
意味ネットワークモデルは、用語と用語の繋がりについての理論ですが、この理論が出る前、階層ネットワークモデルが出されていました。しかし階層ネットワークモデルでは、説明できない効果があったことから、その欠点を補った意味ネットワークモデルが提唱されました。
このネットワークモデルの提唱者は、中心人物としてそれぞれ二人の名前が挙げられますが、両方のモデルの提唱者であるコリンズが、主にこの理論の研究をしていたと私は考えるようにしています。
そうすることで、この理論同士の繋がりや、提唱者が覚えやすくなりましたので、お勧めです。これを読んでくださっている方も、自分なりにストーリーを作ってみてくださいね。
それでは早速、時系列に沿って階層ネットワークモデルから説明していこうと思います。
階層ネットワークモデル
これは、1969年、コリンズとキリアン(Collins & Quillian)によって提唱されたモデルです。
このモデルによると、言葉には階層があり、この階層が近いほど検索が速くされやすい、速く想起されやすい、というものです。
<検証>:真偽判定課題
このモデルは、真偽判定課題という課題を使って検証をしました。
ここでの題はカナリアです。
「カナリアは鳥ですか?」「カナリアは皮膚がありますか?」のように、階層の異なる用語同士を結びつけた文の正誤判断を行ってもらいます。ここでの判断速度をグラフにしたものがこちらです↓
この結果から、彼らはこのようなことを考察しています。
- 反応時間は、主語と述語の階層の違いが大きいほど長くなる
- 情報の検索、想起は、概念間のリンクを辿ることで行われている
- 検索に要する時間は、多くのレベルを移動するほど長くなる
ですが、ここで、『典型性効果』の説明が困難であるという指摘を受けます。
※典型性効果 typicality effect
典型的な事例ほど判断がはやくなる、という理論。
例:典型的事例「カラスは鳥ですか」
非典型的事例「ダチョウは鳥ですか」
※典型性効果は定義的特徴理論(定義的特性理論)にも登場しますので、ニュアンスは覚えておくといいかも。
ここで階層ネットワークモデルの限界をみたコリンズ(Collins)は、相棒を変え、この欠点を克服したモデルを提唱します。それが意味ネットワークモデルです。ようやく登場です。
意味ネットワークモデル
コリンズとロフタス(Collins & Loftus )
このモデルは、意味的関連性の効果を説明するために、意味的距離の考え方を導入しました。
(階層ネットワークモデルでは、各用語の階層間の距離は一定という考え方でした。)
こんな感じです↓
ちょっと大げさかもしれませんが、「動物は食べる」よりも「動物は動く」の方が想起しやすいと思います。その例を挙げた図です。汚いのはご勘弁を。
彼らはこのモデルについて、こう考えました。
- 意味の関連が高い概念間はリンクが短い
- リンクには異なるラベルがある(can , eat等)
- 意味処理は活性化拡散(※1)による
- プライミング効果(※2)によって説明される
※1活性化拡散 Spreading activation
活性化拡散とは、ある概念が提示されると、その刺激によって、他の概念も活性化される、ということです。この活性化は意味ネットワークを通じて拡散されます。
例えば、「動物といえば犬と猫」と思っている人に、『動物』という刺激を与えると、『犬』や『猫』とは言っていないのに、自動的に活性化が拡散され、犬と猫を想起しやすい状態または想起された状態になるということです。
これは典型的な成員ほど、上位概念を活性化すると考えられています。
※2 プライミング効果
プライミング効果については、今回の記事では扱いません。
別記事『プライミング』を更新予定ですので、そちらを参考にしてみてください。
以上で意味ネットワークモデルについてのお話は終わりです。
このモデルは心理学を学ぶ上で常識の一つといっても過言ではない理論ですので、確実にモデルの説明、提唱者までできるようになっておかなければなりません。頑張ってください。